建築用内外装 特注レンガタイル 設計資料

レンガタイルメーカー / TLCアソシエイツ:私は、タイル業界に入って今年で37年目になります。様々な経験を通し、現在は建築設計事務所の皆様の「建築用のレンガタイルの専門家」としてお手伝いしながら活動しています。昨今、本当の事を困っている方々に伝えたい気持ちが溢れてきました。一つでもお役に立てる事ができればと思います。

広島「世界平和記念聖堂」

■世界平和記念聖堂
所在地・広島市中区幟町4番42号
設計・村野藤吾
施工・清水建設 
定礎式 1950年8月6日、献堂式 1954年8月6日
鉄筋コンクリート

建築面積 1,230㎡
高さ 天井18.00m
屋根 23.00m
鐘塔 45.00m
撮影 TLCアソシエイツ kisara

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あいにく天候に恵まれず、晴天下での見学はできなかった。
焼き物を扱う私が、この外壁はモルタル・レンガとは知ってはいるものの、強い胸の高鳴りを感じながら教会を前にした。

この巨大な迫力と静寂の中で、私に対峙するこの建築の精神性は心の奥深くまで浸透してきた。時間の許す限り、目に焼き付けて帰ろうと思った。

有名建築だけに、様々な専門家の評論は多々存在するが、壁面の創作を専門の仕事として長年携わってきたものとして、村野先生のこの意匠表現を目視し、体感として味わってみたかった。春夏秋冬、朝昼晩、各々違った環境で本来なら体感してみたかった。

 

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レンガの粗積パターンがフランス積みになっているところも、リズミカルに目地の粗さとの調和をもたらせているかもしれない。
小口面と長手面の荒さと粒子の違いで、焼き物の窯変のような雰囲気まで発している事がわかる。

実際に施工した関係者や職人に、目地はレンガ積みのモルタルがはみ出たところを目地鏝でさっと押えただけのものなのか、一本目地でさらに注入して目地きりをしたのかは、聞いてみないとわからない。しかし十分どの部分も凹まず目地部分が充填されているので、後者の手法も考えられる。

外壁のどの部分かはわからないが、実際に第一次補修工事が、1983年におこなわれ、二次(1989)、三次(2001)と行われている。
この聖堂のレンガは、荷重を少なくするために、モルタル・レンガの一部をくり抜いたレンガを使用している。大変興味深い。


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凹凸の差は25mmはあるだろうか。モルタルの中の川砂が、沢山の色数と粒子の大小混合となっている。コンクリート色の梁部分と見比べると、レンガの中に含まれる珪砂の微妙な薄茶色が、レンガ壁面を柔らかい朽葉色を帯びたグレーに変化させて見えるのは、はじめから狙ったものであろうか。

せっ器質レンガタイルにおいても、私は「隠れ色」と呼んでいるが、一見近くでは醸し出さないが、やや離れることによってふわっと現れる土色がある。その焼き物に相当するような、この教会のレンガは、天然の川砂の結晶のようなものであったのだ。その素材感が、やはり人間の厳しい「目」に素直に感じさせる材料となっていたのだ。

昨今、当社でも目地の表現を評価されご指定いただいているが、下記の参考図書にあるように、昔から建築家・デザイナーと現場監理者・職人の目標とする感覚のズレがやはり生じていたのだと親近感を感じた。
今の時代もあいかわらず、建築業界の都度勝手な無理解でのこだわりに関してである。必要以上に、顕微鏡的に美的感性の仕上げまでも意味なく指示されたり、芸術的感覚で目指しているものを、杓子定規に無理解の中で、監理者としての立場だけで言われたり、おかしなことが多々あるのである。
その為に、素材メーカーである我々が、専門の技術者と絶えず、切磋琢磨して現場に臨まなければならないのである。



▼下記参考図書参照:

「アメリカの煉瓦積みの技法書などを参考にしながら、極端に荒々しく処理したり、そこに強い陰影がでるようにしたりして、独特の肌理を造る工夫を加えていた。」この手法を意識して使った最初の注目作品は、「広島平和記念聖堂」であり、ここで村野が実現した外壁の目地処理の大胆さは、多くの建築家たちを驚かせた。」(以下略)

村野氏はあえて「荒っぽく善い仕事」を職人たちに要求した、と書いているが、設計者が、「コンクリートを打ったら一切修繕無用の事、豆板があっても石ころが出ていても、一切手を加えてはならぬと厳命」し、「人造ブロックの叩きが細かいと云って文句をつけたりした」ために、仕事熱心できれいな仕上げを心掛けよ、と常々いわれ続けてきた現場の職人たちを大いに戸惑わせた、というエピソードを残している。村野はあえてその種の指示を出すことによって、先に触れたような、近代科学や工業がもたらす精密さや、幾何学的な直線直角性といったものを、外壁面の表現においてできるだけ遠ざけ、それをもっと人の手や身体の痕跡を残したものにしたい、という村野が持ち続けてきた、≪建築美学≫の実現を目論んでいたと思われるのだが、もちろんそうした意図は、現場の職人たちはその時知る由もなかったはずである。その種の村野の意図は、モルタル・レンガの目地の間からはみ出したモルタルを、竹べらで粗く早く横に引いて、それでも残ったモルタルをそのまま放置したかのように見える、あの独特の美しい外壁の表情となって実ったのである。
村野はこの聖堂の竣工時に、「これから10年後になったら何とか見られるようになりましょう」と述べて、この建築についての評価に、ある程度の時間的な猶予を求めたといわれるが、彼はあえてこのような≪不完全さ≫のままに自分の建築を誕生させることによって、「直線多様の現代建築」につきまとう「ストレス」から、誕生時の自分の建築を開放してやろうとしていたのであり、その独特の“緩み”のある形態や、荒れた素肌の間に、建物にうまく年齢をとらせようとする余裕と余地を、あらかじめ与えておくことを心掛けていたのである。

建築資料研究社 村野藤吾のデザイン・エッセンスVol.3
外の装い 素材とファサードより引用

 

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★下記は、せっ器質の当社レンガタイルであるが、モルタル・レンガのテクスチャーを参考に、下記下段の粗面(ワイヤーカット面)にショットブラストを加工して、セメント色とは違った村野式出目地をチャレンジしてみたいですね。

チューブ目地で目地切り・・・・・・・・。

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